オリンピックはこれでいいのか

 レスリング界が揺れている。2月13日のIOC理事会で、2020年のオリンピック競技種目からレスリングを外す方向が、投票で決まったという報道が流れた。決定の根拠は幾つかあると言う。
 第一に、レスリングの人気が低迷していて、観衆が少なく競技の収入が少ない、テレビの放映収入その他にも影響が予測される、つまり、経済的な減収。除外を競り合った、「近代5種」は、理事の出身国が絡んで残ったとか、テコンドーは参加国の大統領直々の訴えがあったとか、取り沙汰されている。現在の会長、副会長、理事は、15人中9人が欧州勢で、構成に偏りがある。レスリングは、日本ばかりでなく、ドイツ、ロシヤなどでも人気があり、アメリカ、イラン、キューバなど外交関係の有無を超えて除外反対の意向を表明している。最終決定で除外が覆る可能性はまだある。しかし、こうした国の利害よりも、レスリングは、マラソンとともに古代オリンピック以来、近代オリンピックでも引き継がれた伝統ある種目である。これだけでも充分な存続理由がある。
 近来、オリンピックは開催国の国力誇示のため、規模拡大と過大な経済投資を賄うため、商業化の傾向が強い。今回の「レスリング除外」は、「国際レスリング連盟」のロビイ活動不足とも言われている。そもそもロビイ活動とは、政治の世界で、目的実現のための水面下の裏工作を言う。利害のために、きな臭い行動が起こりがちだが、斯様な行動はスポーツ界には似つかわしくない。この際、レスリング競技継続を主張する国々は、自国の利害を超えて、伝統ある競技の存続のため、結束してオープンな場で、IOCの理事達と渡り合って欲しい。