ふるさと納税の思わぬ展開

 2008年度に地方税の増を狙ってスタートした「ふるさと納税」制度には納税者が敏感に反応して、急速に拡大し、地方の特産品のおまけの販促なども加わり拍車がかかった。ここまでは名案と感服していたが、高所得層が目をつけ、節税効率のよさから高額の利用を生み、受け入れ側も見返りに金券などを発行し、ネット販売業なども便乗して参入し、新しいビズネス現象になった例まで現れた。地方への寄付行為は思わぬ方向に逸脱して、慌ててブレーキを踏んだ行政機関の歯止めも後の祭り、2015年度には1300億円〜1400億円の税収額に達する由だ。金持ちの財欲は限りなく、鵜の目鷹の目で儲けを企む。
 返礼品競争で、折角増えた地方財源も目減りして、福祉や子育ての拡充を圧迫する。寄付行為は本来見返りを求めないもの。災害に寄せられる支援などは見返りを求めない純粋な行為だ。おまけ競争で釣るふるさと納税地方自治体にとっては麻薬作用を齎した。この有様は、「タックスヘブン」に逃げ込む超高額所得層と変わらない社会現象と言える。