天災と人災

 2011年の10大ニュースは福島原発の事故と東日本大震災がトップを争っている。災害の規模は大震災の方が一見大きいように見える一方、原発の事故は震災が誘引した災害なのだが、防止可能だった側面が明らかになり、その怠りが災害の範囲と時間を際限なく大きくしてしまった。
 原子力のエネルギー利用は長い間、賛否の論議が続きながら、利用済み燃料の終末処理の確立も見出だせないまま、利用を拡大してきた。しかも、わが国では、原子力推進は、政、官、業、一体となり、電力業界の独占態勢のもとに肥大化してきた。その結果、核エネルギーが人智では制御不能なことを思い知る結果となった。長年、原子力利用を推進した、政冶家、官僚、業界の当事者の責任は明確だが、今、我々すべての課題として、エネルギー利用を考え直す必要があると思う。
 経済用語に「入るを計りて出ずるを制す」という考えがあるが、今までの、際限なく電気を消費する生活傾向を考え直し、「利便追求が必ずしも幸せに繋がらないのだ」という「生活の基本姿勢」を持ってはどうか。先日、来日したブータン国王夫妻は、我々の忘れていた「幸せ」の意味を示唆してくれたように思う。