一途になること

 毎年のことだが、梅雨時になると、無力感が忍び寄ってきて、鬱気分になる。気分転換に何かやろうにも、体力が落ちてきているので億劫さが先にたつ。そんな折、大學の「公開講座」に出かけることになった。「マイノリティ・アウトローストレンジャーーその[非日常」的な日常世界ー」という長いテーマの5回連続講座だ。少数者民族が多数民族の国家でどう行動したかという歴史上の考察をしたものだ。例えば、中央アジアからシルク・ロードを中国まで旅する名もなきイスラム人の足どりを微細な遺物を調べて紹介する。日本史では、中世、最初は悪党と称せられた少数武士集団が荘園の支配を奪って鎌倉幕府御家人になってゆくー楠正成などの地方武士の出自からの解き明かしは初めて聞く話だった。1講義2時間だが、進行につれて、話し振りは熱を帯び、微細な史実までを紹介して、研究にのめりこんでいる熱気が伝わってくる。この公開講座には毎年通っているが、今年は特に講師の熱っぽさに刺激を受けた。
 5講義すべてが興味深いテーマではなかったが、一睡もせずに聴き通したのは、講師の一途な熱気に魅せられたせいだと思う。