尖閣問題とEUのノーベル平和賞受賞

 尖閣諸島の中国との争いは、野田政権の拙劣な国有化の行動が中国を刺激して、問題を殊更大きくしてしまった。外交の不手際もあるが、中国の大国らしからぬ対応もあって、当事国の国際的評価はかなり低落した。折りしも、EUノーベル平和賞が決まった。賞はEUグループを対象としたものだが、その淵源を辿れば、第2次世界大戦後のドイツフランスの和解、協力が発端と考えられる。両国は19世紀から20世紀に掛け70年間に3度戦った。両国は先ず、争いの源であった石炭、鉄鋼の共同市場「欧州石炭鉄鋼共同体」を1952年に作った。これが今の欧州連合の前身である。その成功が、近隣諸国の注目するところとなり、東欧の民主化バルカン半島の平和にも波及したのだ。EUは共通通貨を実現したが、構成国財政のばらつきや移住民による雇用の流失など、なお未解決の難問を抱えているが、最早、問題解決を武力に訴える愚を再度引き起こす事はまずあるまい。
 翻って、昨今の日中のやりとりは両者とも、解決の糸口を探る努力もせず、いたずらに民衆の愛国心を煽ったり、我田引水の歴史を主張するばかり。戦後の日中国交を実現した両国の先輩指導者は、天国で臍をかんでいることだろう。
戦後の日本は、あらゆる面で、アメリカをお手本に、国力を伸ばしてきた。わが国の平和志向、民主主義の成熟度は上ったが、政治の貧困から、行動は専ら内向きで、東アジアでのリーダーシップはとれずにいる。今、日中両国は、独仏の故事に倣い、協調融和の手本を示し、ともに東アジアのリーダーたるべく行動をしなければならない。領土の争いには必ず原因がある。歴史的裏ずけで領有のみを唱えるのは最早時代遅れではないか。専有に拘るより、共同で資源の開発や利用の提案がなぜなされないのだろう。