アルジェリアの悲劇を繰り返さないために

 アルジェリアのテロ事件は、日本人の犠牲者が最多に及ぶ痛ましい結果で終わった。貴重な人材を多数失った「日揮」のみならず、日本にとって、得がたい人材がむごい最期を遂げ、ご本人達の無念、親族の悲しみは、察するに余りある。なぜこんなに日本人が狙われるのか。あるいは、身代金目あての思惑だったのだろうか。何れにしろ、目的の為には手段を選ばない過激な連中で、アルジェリア政府も真っ向から対応した結果の犠牲だったと推測される。
 私は、この災害について、3つのことを指摘したい。
 第一は、最近海外で活躍を目指す若い世代が、他国に比して極度に少ない現実。日本は島国で、不況や就職難、災害など、暮らしに問題はあっても、平和な日常が確保され、政情不安や身辺の危険が多い海外に比べ、恵まれた環境にある。海外には、発展途上の魅力ある天地が沢山あるのに指向しない。今回の事件をみて、海外進出を躊躇する「活躍世代」が益々増えるのではないかと危惧する。この傾向が続けば、日本は国際競争に更に水を空けられることになりはしないか。海外進出の国民保護は、政府の喫緊課題である。
 第二に、悲劇を二度と繰り返さないための対策だ。事件の真相が明らかになるにつれ、テロ集団には周到な準備、情報活動があり、アルジェリア側に内通者までいた由である。アルジェリア政府は、施設の警備には厳重を極める態勢だったようだが、情報収集に重大な落し穴があったことに気付かなかった。正に、虚をつかれたようだ。テロ対策の情報活動は高度な組織と経験を要し、一朝一夕には構築出来ないだろうが、国際間のネットワークを組み、日本もその一員として行動する。わが国は、アジア圏の情報収集に力をいれ、その情報提供の片方で、アフリカや中東諸国のテロ対策に必要な情報を得る、緊密な国際協力がなければ、モグラ叩きのようなテロ活動防止は不可能ではないか。今度の救出の最中、現地人の機転で現地人を装って難を逃れた邦人がいた。日頃の友好関係がとっさの機転となった。現地人に味方を作る貴重なヒントだ。
 さらにもうひとつ、危惧の点がある。現政権のなかには、戦力の強化、自衛隊の活動制約緩和、更に、憲法改正に導く、戦争経験のない、タカ派がいる。非常時の自衛隊行動にとって、制約が厳しすぎるという意見には一理あるが、武力の行使には出来るだけ制約があったほうがいい。国際紛争、特に、テロ防止は、自衛隊の強化などだけで、防止できることではない。在外武官の増加で情報をあつめろなどと言う単純な輩は論外だが、今回の事件に便乗して、戦力強化、自衛隊法改正、ひいては、憲法改正に誘導しようという思惑を抱く輩には、テロ同様に、厳重な警戒が必要である。