長嶋、松井の国民栄誉賞受賞

 国中挙げての賛辞を浴びたが、ちょっと引っかかることがあるので、調べてみた。この賞は、内閣総理大臣表彰の一つだそうだ。道理で芝居がかった受賞式に、表彰者の安倍首相が野球人一色の中、96の背番号ユニホームまで着てアンパイアを演じていた。96の背番号まで付けて大向こうの注目を引いたのは、誰の策略かと感服した。夏の参議院選挙に向け、何でもありのパフォーマンスと受け取ったのは、私の思い過ごしだろうか。今まで何人か受賞辞退者がいる。作曲家の古関裕而は没後の受賞を遺族が辞退、野球のイチローは再度の受賞打診を現役中を理由に辞退している。傑作は、1947年生まれの元阪急ブレーブスの1067盗塁記録でお声がかかった福本豊、「そんなん貰ろたら居酒屋で気楽に飲めんようなる」と断ったそうだ。今も解説者としてユーモアたっぷりの活躍をしている。
 政府の行う褒賞制度は天皇の国事行為で、明治14年に始まり、数度の変遷を経て現在、紅綬、緑綬、藍綬、黄授、紺綬、紫綬の6賞がある。これらは、対象分野により、政府機関が対象者を決め、内閣で決定する。一定の基準に照らして、選定するのだろうが、永年やや事務的に処理されているのではないだろうか。
 先日、テレビを観ていたら、関口知宏のルポで、NPO法人「きぼうの家」が紹介された。東京山谷の孤独老人の終末を看取る施設で、21人の人が人生の終焉を待っている。しかし、その表情は意外と明るく、清潔で平穏な雰囲気だと関口も安堵のコメントを述べていた。そこに通っている介護ヘルパーの渡辺さんが「これは私の天職と思って続けています」と淡々と語っているのを見て、社会の底辺で奉仕する無名の人々こそ、褒賞の対象にするべきではないかと、関係者は従来の選定を継続するだけでなく、血の通った努力をして欲しいと思った。