じわじわ迫る右旋回の気配

参議院選は自民の願い叶って、与党は過半数を確保したが、与党の目指す次の政治課題の実現に向かって、不安な動きが現れ始めた。
 先ず、自衛隊の「集団的自衛権の行使」の容認のため、法制局長官の首の挿げ替えだ。従来の法制局長官は、否定的だった憲法解釈を改めるために、肯定意見を期待できる後任者を、従来の慣例を破って、人選した。人選は必ずしも慣例に拘る必要はないが、政策実現に好都合な人事は公正さを欠く。マスコミも挙って反対の意見だ。
 社会保障改革を諮問した国民会議は、世代間の社会保障平準化のため、各世代に広く負担を求めることを答申した。政府は、負担の増える年代層の不満をかわすためのてこにする狙いがあるのだろう。
 懸案の財政改革には財源を増税に求めるしかないが、消費税を上げることに思案投げ首だ。過去、消費税増税を実施した政権は国民の支持を失い、退陣した例が多い。確実な景気の上昇が実現しない裡に増税をどう実施するか、財政再建を先送りすれば、「円」は国際間の信頼を落とし、日本経済は破綻の危険水域に落ち込む覚悟が要る。先日、ドイツの健全財政が頑固なまでの緊縮に守られていて、そのため、修復できないぼこぼこ道路ができているとあったが、国民が我慢しているのは、再度の大戦敗北後のインフレの経験が国民の隅々まで沁み込んでいるのだろう。ここは一番、まずは1パーセントでも消費税を上げて、財政再建の意思表示をすべきだ。要は、このような説得を国民に訴えられるかだ。
 自民党のなかには、様々な分子がいて、従来型の利権追求分子も少なくない。指導層は、古い体質分子を抑えて「死中に活を求める」決断できるのだろうか。
 政権の宿題は、対中国、対韓国の関係修復、TPP交渉、「憲法改正」と、目白押しだ。