映画「終戦のエンペラー」を観て

 終戦直後、連合軍総司令官マッカーサーが、軍事秘書のボナ・フェラーズに命じて10日間で、終戦に際し、天皇がいかに関わったかを調べさせる。ボナは、天皇側近を洗い出し、その証言から、ポツダム宣言の受諾の真相に迫っていくというのが、あらすじである。岡本嗣郎の原作「陛下をお救いなさいましー河井道とボナ・フェラーズ」はドキュメンタリーではないらしいが、かなり史実を調べた形跡は推察できる。東条英機近衛文麿、木戸孝一などが登場して、その証言などから、天皇ポツダム宣言受諾の決断へ迫ってゆく。そのプロセスも見所だが、マッカーサーの真相究明へのこだわりと、アメリカ本国の大勢は天皇に戦争責任を負わせようとするが、その動きに動じなかった姿勢が感動を促す。最後は、天皇と会見して、自ら本人を確認しようとする。天皇の戦争責任を回避しない態度と国民を救いたい純粋な熱意に打たれるというのが結末である。
 15歳、焼け野原の東京で終戦を迎えた小生は、マッカーサーの威厳に満ちた風貌や戦時中の指導者の多くが潔くない末路を辿るのを間じかに見てきた。それに引き換え、天皇が自ら出向いて、マッカーサーに面会したことは、驚きと同時に、はっきり世の中が変ったことを認識させられた。しかし、そこ至る裏面に、この映画が語るようなことがすべて真実でないにしろあったであろうことは感動に値する。
 それにつけても、昨今の指導者層には、傑物と認められる人材が見当たらない。