甲子園の球児を観て

 今年の夏の甲子園には特別な想いがあった。初回から100年。全国3906校から勝ち残って甲子園にきた49校のなかには第1回出場の早稲田実業鳥羽高校がいた。近年出場校の実力は向上して地域差が少なくなり、投打のバランスもよく、2回戦、3回戦と進むに従い、接戦の好試合が多くなった。決勝は神奈川の東海大相模高校と仙台育英高校の対戦となった。まだ優勝実績のない東北地方に優勝旗を齎すかと仙台育英への期待は高まったが、決勝試合半ば、育英が6点の差に追いつき、終盤の接戦に期待が高まったが、9回に相手投手にホームランを打たれ、瞬時に勝利の女神は遠ざかっていった。仙台在住の私は勿論育英に勝たせたかった。
 高校野球は技の錬磨や連帯の精神も貴重だが、選手にも観客にも郷土愛を呼び起こす。1部の選手はその技量を買われてプロの道に進むが、大半の選手は野球による心身の経験をもって色々な人生の未来に進み、その体験は生涯忘れる事はあるまい。
 私は東京に生まれ育ち、10代半ばまで過ごしたが、10代後半に東京を離れ、東北で過ごし、就職先は東京だったが、東京は稼ぎの場にすぎず、一時転勤で北海道、大阪での暮らしもあったが、いずれの地も自然、気風に馴染まず、故郷を持たない老人になり果てた。
「人生いたるところ青山あり」とはいうが、帰りたい故郷のない身には生まれ育った故郷に愛着のある人が羨ましい。