甘利明氏の辞任が示す政治の旧態依然

 安倍内閣の政策に最も必要な戦力の甘利明氏が辞任に追い込まれた。安倍総理には思いもかけない打撃が最悪の時期に起こった。
 甘利氏は神奈川県出身の2世議員、先祖は戦国大名武田の重臣と言われ、地元との関係は長く深い。日常、色々と要望がもちこまれ、その対応に追われるのが秘書の役割と言われる。地元民の生活に関わる要望に応えて行政機関等に働きかけるほか、特定商工業者などから持ち込まれる問題には私的利害に繋がる金銭の提供がからむ危険が起こりがちだ。それに関わる秘書の処理管理を怠れば、贈収賄の発生、管理する議員の責任が問われ、失脚の難を招く。
 1985〜6年リクルート事件のあと、政治献金の抑制を狙い「政党交付金の制度」ができたが、政治家自身が抜け道を残すような有様で、厳格な政治献金抑止効果は実現しなかったばかりか、最近は、企業の政治献金復活が表沙汰になっている。国民の税金から支出される政党交付金原資は年間1人250円、2007年319億円。甘利氏は、1998年小渕内閣の労働相当時「人材派遣協会加盟の12社」から献金をうけている。
 政治家は、公益、私益を峻別し、政治活動に携わる関係者の隅々までその意識の徹底をはからねばならない。選挙区の維持のため、地元の要望を取り上げ、そのために行政機関等に橋渡しをするのが秘書の日常活動となる。有力な2世議員ほど地元との交際いも多い。選挙区の正当な要望に応えることは政治家本来の仕事だが、個人や企業の利益のための支援の見返りには金銭がうごく。世帯がおおきくなれば議員の周辺で活動する秘書も多くなり、その管理の弛みが不祥事の発生に繋がる。検察は手加減なしにその活動チェックを厳正にすべきだ。政治家側に責任が問われるのは当然のことだが、問題を持ち来む側の責任、政治活動への不正な認識も同様に問われてしかるべきである。